MEMBER

メンバー紹介


石橋 哲(わかりやすいプロジェクト 国会事故調編代表)
【プロフィール】
石橋哲と申します。普段は事業・組織変革等のお手伝いをする元銀行員。2子の親です。国会事故調には調査統括補佐として参加、プロジェクトマネジメントを担当しました。熊平さんとの会話から生まれた「わかりやすい国会事故調プロジェクト」。どんどん成長してほしいと思います。

メッセージ

たまたま縁あって参加した国会事故調では、おそらく世の中の人が薄々感じてきたであろうコト、メディアを通してでは一向に見えてこない様々なコトが「事実」として眼前に突き付けられた。それは、これまで自分を包み込んでいた心地よい安心感が根拠のないものであるばかりか、「作られたもの」であるかもしれないという疑念となった。報告書提出後の展開やメディアの動向は疑いを確信に変えつつある。
愛国心とは既得権益を護持することを指すのではなく、この国土と生活文化の中で自分たちの未来を幾世代にわたって奥行き深く育んでいこうとする心を育てることにこそある。現下に目に入る諸状況は果たしてそうなっているだろうか。声高に叫ばれる「愛国心」の掛け声とはうらはらに、若い世代と今後生まれてくる世代にとって、この国土に住み続けることの合理性は加速度的に失われつつある。様々な建付けが複雑に連関して構築されているこの状況を打開するには、この事態を招来した「大人世代」の真摯な覚悟と不断の努力が不可欠だ。だがその播種が実を結ぶまでには時間を要する。残された時間はあまりにも少ない。
大人世代が将来世代に残せることは、播種の乏しい成果だけだろうか。人類の歴史上、世界の各地において様々な構造的な問題に起こってきた。それぞれの世代は、それに対して真摯に向き合ってきた。その蓄積が「歴史」だ。
そう考えるとき、福島原発事故に対してこれまで「大人」といわれる世代が何をしてきたのか、「大人」が問題をどう捉えどう反省するのか(あるいは反省しないのか)を将来世代に正しく伝えることは、大人世代が将来世代に残せるもう一つの「遺産」と位置付けることができる。むしろ、それこそが「将来世代」が自らの生活基盤をどの国家に置くかの選択をする際、この国がその選択の俎上に残るための必要条件である。
この取り組みが将来世代に伝える成果の最初の種子となってほしいと思います。

熊平 美香(事務局長)
【プロフィール】
はじめまして、熊平美香と申します。社会、企業、個人の変革と学習を支援する仕事をしています。日本の子どもたちや若者が、21世紀を幸せに生きる力を学習する機会を増やすために、親や先生、社会人のネットワーク創りにも取り組んでいます。

メッセージ

国会事故調査報告書は、その難解さにもかかわらず、私にとっては親しみのある存在でした。ティーチフォージャパンでお世話になってる黒川清先生と、10年来の友人の石橋哲さんが取り組まれたからです。このプロジェクトを立ち上げる決意をしたのは、石橋さんの慰労会と称して友人達が集まった2012年9月11日のこと。立派な報告書が完成し、これから、原発事故に関する国家レベルでのリフレクションが始まるものと思っていた私は、慰労会でお会いした石橋さんから想定外のお話を伺いました。霞ヶ関は、2011年12月16日に、すでに収束宣言を出しており、この報告書も、「無かったもの」になりそうだというのです。以前から、東京電力および電気事業連合会の「力」については、業界の方達からお話を伺っていたので、これまでの常識なら、「無かったもの」となるであろうことは容易に想定できました。しかし、ここまでの事故を起こした後も、「これまでの常識」が通用すると考えている人々がいるというのはショックでした。大人が、このような状態では、日本の子ども達は幸せになることができないという強い危機感を持ちました。世界の教育界では、21世紀を生きる子ども達にとって、核となる力が、リフレクションとメタ認知力と言われています。もし、大人が、原発事故の教訓から学ぶことができなければ、日本の子ども達は、リフレクションの意味を永遠に理解する事はできないでしょう。リフレクションは、責任の追及では有りません。報告書を過去のものとして忘却に帰するのではなく、そこを出発点としてこの問題をいかに解決していくかを議論し、今後の日本のあり方に反映していくことです。このテーマを身近に感じ、主体的に関わろうと考えてくださる方が増えることを心から願っています。

郷津 光(教材開発・輪読会担当)
【プロフィール】
大学を卒業後東京電力の子会社に就職。退職した後、大学院に入学するも、その在学中に東日本大震災に遭遇。以降、社会対立の分析・緩和を目指し東日本大震災後の諸課題に関わり続ける。

メッセージ

現在
プロジェクト内にて教材開発・輪読会を担当しています。
また、独自に『国会事故調報告書』の論点および評価部分(総数1400箇所以上)の抽出作業を行いました。それを基に、依頼に応じる形での資料作成も行なっています。
参加動機等
非常に複雑な東京電力福島第一原発事故をテーマにした活動にも関わらず、『わかりやすく』と『対立ではなく対話』を掲げる姿に興味を持ち、プロジェクトに参加しました。
私は国会事故調の元メンバーではありません。学者でもありません。全くの素人です。
それ故に、(ありきたりですが)参加当初「素人の私が、非常に複雑な問題に対して建設的に関わる事が出来るのだろうか」と悩みました。
しかし、多くの人の情熱にふれ、具体的な活動を経た現在では、「素人だからこそ、多くの人と同じ目線で、『あの事故とはなんだったのか』を解りやすく伝える事が出来る。多くの人がこのプロジェクトを切掛けとして各報告書に興味を持ち、『あの事故とはなんだったのか』を、それぞれの言葉で後世に語り伝えられるようになってほしい」、
そう思うようになりました。
今後とも、多くの社会的な対立が対話を通じて少しでも緩和の方向に向かうよう、「わかりにくい」様々な問題と、無理をせず等身大で向き合っていきたいと思っています。

鈴木 宏和
私には3人の子供がいます。小学校1年生の長女、幼稚園年少の長男、そして1歳の次女です。3人の大切な子供の為に、幸せで豊かな社会を残したいと考えています。
なぜ、あのような事故が起きたのでしょうか?我々は、事故から何を学び、それをどのように活かせば良いのでしょうか?
3.11の東日本大震災および福島第一原子力発電所事故以降、ずっと考え続けてきました。
事故の後、歴史上初めて国会の下に事故調査委員会が設けられました。
事故原因および事故後の対応について、真実を国民に伝え、国民そして全世界から、政府が失った信頼を回復するために。
調査の結果、事業者及び規制当局の組織上の問題点を始め、様々な社会の構造的問題が明らかになりました。
その構造的問題の本質は、決して原発に限った話ではないと感じています。
公表直後、報告書の内容はメディアにも大々的に取り上げられましたが、その内容はきちんと国民の皆様には伝わっていないのではないかと危惧しています。
海外では、国会事故調の報告書は、非常に高く評価されています。
諸外国は、福島の事故から学ぼうとしています。また、日本が事故から何を学び、どう変わるのかを注意深く見守っています。
私は今、日本は大きな岐路に差し掛かっていると感じています。
我々は改めて、事故そして日本が抱える構造的問題点に、きちんと向き合う必要があるのではないでしょうか。
子供達の未来の為に、世界に誇れる社会を残したい。それが私の願いです。
Yurina Aikawa
相川 祐里奈
【プロフィール】
福島の原発事故を機に読売新聞東京本社の記者をやめ、国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会で調査員として被害の実態の調査を行った。現在は、国会事故調査委員会では伝えきれなかった病院や介護施設の避難の課題や現状を伝えるべく、フリーランスのライターとして活動を続けている。

メッセージ

「東京の人みたいに他人事のような顔する人にはなりたくない」
東京の大学にいってもいいんだよという母に対し、避難生活をおくる飯舘村の女子高校生はそう答えました。2年前の原発事故。福島県外の人たちと話していると、まるでこの事故は既に過去のものになっているように感じます。
原発事故の被害は終わっていません。被災者1万人のアンケート結果をもとに被害の実態を調査した国会事故調の報告書は、政治の混乱でかき消され、内容について議論されることのないまま現在に至っています。誰もがあの事故に対して責任をとらない中で、原発事故の教訓はいかされることなく宙に浮いたままです。
今回のプロジェクトでは、2年前の原発事故について学生視点で振り返り、国会事故調のメンバーと議論を交わしながらこの事故の実態を多くの方に伝えるには どうしたらいいか試行錯誤を重ねてきました。次世代を担う学生が福島原発の事故をどう捉えるか。彼らから発せられる言葉が少しでも多くの方に届き、あの原発事故について改めて“自分のこと”のように考えてもらうきっかけになればと思っています。

細川 甚孝
1971年秋田県生まれ。上智大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程満期退学・早稲田大学大学院公共経営研究科修了(公共経営学修士)。2000年前後から自治体などの総合計画、行政改革などのコンサルティングに携わる。土木設計事務所、大学機関、広告代理店などでそれぞれの持ち味を活かしたプランニング・コンサルティングを経験。2010年ごろから、活動範囲も政治・政策・企業経営・NPO活動支援までに広げ、現在全国規模で活動中。現在、合同会社次世代創造共同代表。

メッセージ

国会事故調の報告書を書店で手にとり、内容を読んだ時に、深い衝撃を受けました。
現在の日本社会の社会構造の縮図がそこにあり、今回の原子力発電所の事故に伴う様々なトラブルは、まさしくこのことを示していました。わかりやすい国会事故調の取組みは、これらのトラブルを構造的を読み解き、より実践的に解決していくものだと思っております。どうか、皆様、資金・気持ち・汗などの何らかの形のご参加をお願い申し上げます。

福嶋 史
【プロフィール】
1987年大阪生まれ。早稲田大学教育学部卒業。在学中は、NPO法人 Teach For Japanで教育格差問題を解決すべく、学生教師・スタッフとして活動。卒業後、コンサルティング・ファームに勤務。現在は、教育系の財団でシチズンシップ教育プログラム「Peaceful School」を全国の子ども達・教育関係者・保護者・社会人に広く展開中。子ども・教育・学習がキーワード。

メッセージ

正しい情報に自らアクセスする・その情報が本当に正しいのかを自分の頭で考える・自分はどう行動するのかを判断する・何かの問題についてオープンに話し合う・多様な意見を尊重する・様々な立場の人と一緒に課題を解決する・事実を見つめリフレクションし、次に活かす。
このようなことを、私を含めどれだけの日本人が出来ているのだろう。この疑問と不安を解決するために、わかりやすいプロジェクトで活動し、日々学習しています。
わかりにくいとされることを、よりわかりやすく。クリティカルに考えることで、質問する機会を増やし、知識を深めていく。その知識をもとに、立場や思考の違いにとらわれずに、オープンに話し合う。何か問題を起こしたら逃げるのではなく、リフレクションをして学習し、次に活かすことの出来る日本になることを願っています。

三島 健治
【プロフィール】
慶應義塾大学3年。2011.3.11の直後に大学へ入学し、その年に黒川清先生の授業を受講していたことで、国会事故調の設置・委員会について知る。2012年、カンファレンスの開催を通して、日本全国・世界の人たちと関わる機会を持つ。

メッセージ

この文章を読んでいるあなた、国会事故調って何か知っていますか?
2013年4月、新学期がはじまり「けんじは、今何してるの?」と友人に聞かれ、「国会事故調で調査されていた方とかと一緒に…」と説明をはじめると
「こ っ か い じ こ ち ょ う な に そ れ ?」
と言われました。あなたはどうですか?
2011年冬、黒川清さんの授業を受けているときに、国会事故調の委員長就任が決まりました。そういうこともあり、インターネット配信されていた委員会をみてみることに。そこに映ったのは、超優良企業と思われてきた東京電力のトップのあいまいな意見、元総理や大臣のたじたじする姿など。レポートがでて読んでみると、そこには「人災」と書かれていました。
ところで、僕が本プロジェクトに参加しているのは、国会事故調というワードを広めたいからではありません。国会事故調が示してくれた「日本の問題点」を、友達を含め僕と関わってくださっている人と共有したいからです。そして、共有できた世界中のみんなと話し合いたいからです。広めるべき価値がある・何かを生む可能性のあるものがそこにあるんです。

小島 寛明
【プロフィール】
朝日新聞の記者を経て、アフリカ、中南米で調査や開発援助プロジェクトに携わっています。2015年春に、のれん分けの形で「わかりやすいプロジェクト原子力災害編」を立ち上げました。手軽なコミュニケーション・ツールが次々に出てくる中で、手間のかかる情報の収集・分析・発信がこれまで以上に大切になっていると感じています。原発事故とその後の対応、福島をテーマに、どんな情報をどのように伝えていくかを考える場にもできたらと夢想しています。息長く、ぼちぼち続けていきますので、気長にお付き合いください。

宮本 剛志(教材開発・教育実践等)
【プロフィール】
1987年鳥取県境港市生まれ。亜細亜大学大学院法学研究科博士後期課程単位修得退学。専門は国会法、立法学。芝浦工業大学非常勤講師等を歴任。
国会の立法調査補佐機関の組織と機能に関する研究を行っている。

メッセージ

東日本大震災での深刻な被害を目の当たりにし、原子力発電所事故の原因究明は急務であると考え、海外の事例を調査していたところ、米国・スリーマイル島原発事故の際の大統領特別調査委員会(通称:ケメニー委員会)の膨大な調査報告書の存在を知りました。これらの研究を進めていたところ、国会に原発事故調査委員会の設置が決まりました。

「これで事故原因は究明される。」──その考え方が甘かったことは国会事故調の調査活動中から感じるところが多くありました。委員会は公開され、希望すれば誰でも傍聴できたため、一般の傍聴席は盛況。しかし、当の国会議員の傍聴者は数名という現実。さらに、報告書が提出されてからの国会の対応を見れば、その希望が打ち砕かれたことは明らかです。全会派の賛成で法律を作り、多くの人を動かし、労力をかけてまとめられた「国会事故調報告書」は、今や過去のものになりつつあります。この現状を何とか打開したいと考え、「わかりやすいプロジェクト」に協力させていただいております。

我々の使命は、「事故を風化させない」ことだと考えております。私は阪神大震災が発生した1月17日生まれです。毎年、誕生日に感じるのは、各紙1面の「あれから何年」という記事が年々小さくなっていくことです。まさに震災が「風化」していることの象徴ではないでしょうか。

時代は進み、今やインターネット、とりわけSNSなどのツールを通じて、誰でも世代や国境を超えて気軽に情報を発信できるようになりました。あらゆる手段を活用し、皆さんに「わかりやすく」伝えていけるよう、研究者の立場からお手伝いできれば幸甚です。

立ち上げ時に、本活動に参画したメンバーです。

相川 祐里奈
【プロフィール】
福島の原発事故を機に読売新聞東京本社の記者をやめ、国会東京電力福島原子力発電所事故調査委員会で調査員として被害の実態の調査を行った。現在は、国会事故調査委員会では伝えきれなかった病院や介護施設の避難の課題や現状を伝えるべく、フリーランスのライターとして活動を続けている。

メッセージ

「東京の人みたいに他人事のような顔する人にはなりたくない」
東京の大学にいってもいいんだよという母に対し、避難生活をおくる飯舘村の女子高校生はそう答えました。2年前の原発事故。福島県外の人たちと話していると、まるでこの事故は既に過去のものになっているように感じます。
原発事故の被害は終わっていません。被災者1万人のアンケート結果をもとに被害の実態を調査した国会事故調の報告書は、政治の混乱でかき消され、内容について議論されることのないまま現在に至っています。誰もがあの事故に対して責任をとらない中で、原発事故の教訓はいかされることなく宙に浮いたままです。
今回のプロジェクトでは、2年前の原発事故について学生視点で振り返り、国会事故調のメンバーと議論を交わしながらこの事故の実態を多くの方に伝えるには どうしたらいいか試行錯誤を重ねてきました。次世代を担う学生が福島原発の事故をどう捉えるか。彼らから発せられる言葉が少しでも多くの方に届き、あの原発事故について改めて“自分のこと”のように考えてもらうきっかけになればと思っています。

青木 建吾
【プロフィール】
こんにちは。東京大学2年の青木建吾と申します。東大-東北復興エイド(UT-Aid)という学生による復興支援団体で代表を務めております。2011年6月に設立されたUT-Aidでは、これまでのべ2000人以上の方々を現地にボランティアとして派遣してきました。
2012年の11月よりこのプロジェクトに取り組んでいます。私たちの活動が、あるいはその成果物が、事故を風化させないための一助となるように取り組んでいきたいと思います。

メッセージ

私は2011年の8月に震災後初めて現地でボランティア作業に参加し、それ以降、宮城県気仙沼市を中心に20回以上東北に足を運んできました。その中で、現地に行ったからこそ感じられたこと、経験できたことというものは色々あります。そうして継続的に東北復興支援に携わり、もはや3.11は私の中で「他人事」ではなくなってきています。
しかし、UT-Aidでは津波による被害を受けた地域への支援を主に行っており、これまで私が訪れたのも陸前高田市への一度を除いては全て宮城県です。今回の東日本大震災において津波の被害が甚大なものであったことは言うまでもありませんが、同時に、福島第一原発事故が大きな問題となったことも、周知の通りだと思います。
あるいは津波の被害以上にメディア等で扱われたこの事故への関心も、東日本大震災へのそれと同様に風化してきている印象を受けます。しかしながら、この事故は決して解決していません。「終息した」ということにしてはいけない問題です。なぜなら、私たちの生活にも直接的に関わる「自分事」であるからです。
私たちUT-Aidは、「多くの人に復興支援のFirst Stepを」ということを掲げて活動をしてきました。今、私はこの原発事故についての「First Step」を踏み出しています。
そして、世間の多くのみなさんにも「First Step」を踏み出していただけるようなもの、原発事故を、あるいは3.11を「他人事」から「自分事」へと変えていただけるようなものを提供できればと思っています。

石橋 哲
【プロフィール】
石橋哲と申します。普段は事業・組織変革等のお手伝いをする元銀行員。2子の親です。国会事故調には調査統括補佐として参加、プロジェクトマネジメントを担当しました。熊平さんとの会話から生まれた「わかりやすい国会事故調プロジェクト」。どんどん成長してほしいと思います。

メッセージ

たまたま縁あって参加した国会事故調では、おそらく世の中の人が薄々感じてきたであろうコト、メディアを通してでは一向に見えてこない様々なコトが「事実」として眼前に突き付けられた。それは、これまで自分を包み込んでいた心地よい安心感が根拠のないものであるばかりか、「作られたもの」であるかもしれないという疑念となった。報告書提出後の展開やメディアの動向は疑いを確信に変えつつある。
愛国心とは既得権益を護持することを指すのではなく、この国土と生活文化の中で自分たちの未来を幾世代にわたって奥行き深く育んでいこうとする心を育てることにこそある。現下に目に入る諸状況は果たしてそうなっているだろうか。声高に叫ばれる「愛国心」の掛け声とはうらはらに、若い世代と今後生まれてくる世代にとって、この国土に住み続けることの合理性は加速度的に失われつつある。様々な建付けが複雑に連関して構築されているこの状況を打開するには、この事態を招来した「大人世代」の真摯な覚悟と不断の努力が不可欠だ。だがその播種が実を結ぶまでには時間を要する。残された時間はあまりにも少ない。
大人世代が将来世代に残せることは、播種の乏しい成果だけだろうか。人類の歴史上、世界の各地において様々な構造的な問題に起こってきた。それぞれの世代は、それに対して真摯に向き合ってきた。その蓄積が「歴史」だ。
そう考えるとき、福島原発事故に対してこれまで「大人」といわれる世代が何をしてきたのか、「大人」が問題をどう捉えどう反省するのか(あるいは反省しないのか)を将来世代に正しく伝えることは、大人世代が将来世代に残せるもう一つの「遺産」と位置付けることができる。むしろ、それこそが「将来世代」が自らの生活基盤をどの国家に置くかの選択をする際、この国がその選択の俎上に残るための必要条件である。
この取り組みが将来世代に伝える成果の最初の種子となってほしいと思います。

植松 真章
【プロフィール】
こんにちは。東京大学医学部2年の植松真章と申します。このプロジェクトに参加させていただいて、日々自分の無知、考えの甘さを実感しています。
福島原発の事故に関して詳しいことはほぼ何も知らない状態でスタートしましたが、少しでも真実に近いことを知り、それをなんらかのか形で再発信してお役にたてればと思っています。

メッセージ

僕はこのプロジェクトに参加するまで、原発事故について何も知りませんでした。“想定外”の津波が襲来し、堤防を超えてしまったのだと思っていました。
堤防が決壊してしまえば全電源喪失は免れないものだと思っていました。避難指示や事故処理は、あの混乱の中、どうしようもなかったものだと思っていました。この事故は自然災害だと思っていました。
しかし、このプロジェクトに参加して、より真相に近いものを知ることができていると感じています。そもそもこの津波が“想定外”ではなかったということ。原発が浸水した場合にとるべき対策が考えられていなかったということ。避難指示をどのように出すのか、系統立った仕組みがきちんと整えられていなかったということ。その結果、どれほど多くの人が、しなくてよかった苦しみを味わったのかということ。そして、この事故が人災だったということ。無知とは怖いと痛感しました。
もちろん、地震や津波が起きた後、被災した方々への更なる被害を防ぐ努力を怠ったという人はいないでしょう。しかし、地震や津波が起こる前にそれらが発生した時の事態、被災者が立つ苦しみを考えられることができていた人は少なかったのでしょうか。自分ももちろん、考えられていませんでした。今ですら、考えられていない部分も多くあると思います。
しかしだからこそ、反省して見直す必要があるのだと思うのです。たとえ現時点では何もできていなかったとしても、何もできていないという事実を認識し、改善しようと努力する必要があるのです。
たとえ一人であってもそのような努力をしている人がいる限り、その人は日本を変える大きなうねりの原点となりえます。一人では何もできなくとも、皆に呼びかけることで大きな力を生み出せます。日本はきっといい方向に向かっていくはずです。このプロジェクトを通じて、この努力を形に変えたいと思っています。
このまま事を進め、何年かしてこの事故が何事も無かったかのように片付けられてしまえば、必ずまた同じような事故が起こってしまうと感じました。過去にはチェルノブイリ、スリーマイル島といった原発事故がありました。日本はそこから十分には学ばなかったと思います。原発保有国であるにもかかわらず。そして今、日本で事故が起こったのに日本という国自身がそれから何も学ばなければ、いったい日本はいつ学ぶのでしょうか。今こそ反省し、悪い部分を修正して前へ進んでいく時だと強く感じています。

加藤 翼
【プロフィール】
大学在学中から現在まで、アカウンティング・ファームにてアドバイザリー業務などに従事。

メッセージ

いまの日本は、囚人のジレンマゲームにおけるナッシュ均衡解に陥っており、そこに組織・個人の慣性力が加わることで、全体最適ではない状態を引きずっているのではないかと感じます。一般的に、囚人のジレンマゲームに陥る一因は、プレーヤー間における意思疎通や利害調整の不十分さにあり、組織・個人の慣性力が強まる一因は、組織・個人における変化の乏しさにあると言われていますが、これらは2011年3月11日から始まった原子炉事故の原因に顕著に表れているのではないでしょうか。この点について、国会事故調の報告書を起点にしながら、より深く考えていきたいと思います。

金子 桂輔
優美に広がる阿武隈の山々、その恵みを蓄えた豊穣なる森と田畑、そして、潮目に魚たちが出会う海――多くの方々が育み、愛してきたかけがえのないふるさとは、そして、そこで営まれていた数多の日常は、今回の原発事故によって音もなく奪われていきました。この過酷な出来事を正確に記録し、それらがなぜ起こってしまったのか、この社会のどこに躓きの石があったのかを過たず未来に伝えていくことは、同じ時代を生きる私たちに課せられた使命ではないかとの思いから、引き続き、このプロジェクトに参加させていただいております。国会事故調の存在とその活動の成果が、この社会に生き、また、次の時代を生きる多くの人々によって、それぞれの「ふるさと」の再生・新生の礎とされ続けていくことを願ってやみません。

亀山 頌互
【プロフィール】
初めまして。亀山頌互と申します。航空宇宙工学を学んでいる大学2年生です。原子力やリスクマネジメントに関する知識も無かったため、毎回のミーティングでは驚くことばかりです。いち大学生としての素直な意見を出すことで、お役に立てればと思います。

メッセージ

3.11以後、私たちは福島原子力発電所事故について見聞きすることが数多くありました。
福島をどのように復興させるのか、脱原発するのか否か…?
私がこのプロジェクトに参加したのは、原発事故が政治の世界で議論の対象になってはいても、どうも現状を正面から見据えていないのではないかという違和感があったからです。この「背中が痒い」感覚は報道を見るだけでは解消されませんでした。
将来についての議論は盛んにされていますが、そもそも原発事故が「なぜ」「どのように」起こったのかは、まだまだ振り返りがなされていないように思います。
私たちは、国会事故調の報告書を大学生の視点を生かしてまとめることで、より多くの人に原発事故の実態を知ってもらうことを目標としています。今まで関心の無かった人、気になってはいたが具体的な行動に移せなかった人を対象として、読みやすく身近に感じられる形で提供したいと思っています。
ミーティングに参加する回数を重ねるたびに、これは日本の皆が知るべきことであるという思いは強くなっています。みなさんの「痒い所に手が届く」ものがお届け出来れば幸いです。

熊平 美香
【プロフィール】
はじめまして、熊平美香と申します。社会、企業、個人の変革と学習を支援する仕事をしています。日本の子どもたちや若者が、21世紀を幸せに生きる力を学習する機会を増やすために、親や先生、社会人のネットワーク創りにも取り組んでいます。

メッセージ

国会事故調査報告書は、その難解さにもかかわらず、私にとっては親しみのある存在でした。ティーチフォージャパンでお世話になってる黒川清先生と、10年来の友人の石橋哲さんが取り組まれたからです。このプロジェクトを立ち上げる決意をしたのは、石橋さんの慰労会と称して友人達が集まった2012年9月11日のこと。立派な報告書が完成し、これから、原発事故に関する国家レベルでのリフレクションが始まるものと思っていた私は、慰労会でお会いした石橋さんから想定外のお話を伺いました。霞ヶ関は、2011年12月16日に、すでに収束宣言を出しており、この報告書も、「無かったもの」になりそうだというのです。以前から、東京電力および電気事業連合会の「力」については、業界の方達からお話を伺っていたので、これまでの常識なら、「無かったもの」となるであろうことは容易に想定できました。しかし、ここまでの事故を起こした後も、「これまでの常識」が通用すると考えている人々がいるというのはショックでした。大人が、このような状態では、日本の子ども達は幸せになることができないという強い危機感を持ちました。世界の教育界では、21世紀を生きる子ども達にとって、核となる力が、リフレクションとメタ認知力と言われています。もし、大人が、原発事故の教訓から学ぶことができなければ、日本の子ども達は、リフレクションの意味を永遠に理解する事はできないでしょう。リフレクションは、責任の追及では有りません。報告書を過去のものとして忘却に帰するのではなく、そこを出発点としてこの問題をいかに解決していくかを議論し、今後の日本のあり方に反映していくことです。このテーマを身近に感じ、主体的に関わろうと考えてくださる方が増えることを心から願っています。

鈴木 邦和
【プロフィール】
1989年生まれ。東京大学工学部4年生。2011年に被災地支援団体UT-Aidを設立し、社会貢献支援財団「東日本大震災における貢献者表彰」を団体として受賞。2012年に日本政治報道株式会社を設立し、インターネット政治メディア「日本政治.com」を運営。

メッセージ

2011年に起きた東日本大震災、及び福島原発事故による被害は未だに続いており、現地での支援活動を通じてそれらを痛感してきました。特に、福島原発事 故は人為的に引き起こされたものであり、事故の中長期的な検証と、それに基づいた具体的な改善に向けて、政府・国民・メディアの三方が、関与し続ける事が大切だと考えています。

鈴木 宏和
私には3人の子供がいます。小学校1年生の長女、幼稚園年少の長男、そして1歳の次女です。3人の大切な子供の為に、幸せで豊かな社会を残したいと考えています。
なぜ、あのような事故が起きたのでしょうか?我々は、事故から何を学び、それをどのように活かせば良いのでしょうか?
3.11の東日本大震災および福島第一原子力発電所事故以降、ずっと考え続けてきました。
事故の後、歴史上初めて国会の下に事故調査委員会が設けられました。
事故原因および事故後の対応について、真実を国民に伝え、国民そして全世界から、政府が失った信頼を回復するために。
調査の結果、事業者及び規制当局の組織上の問題点を始め、様々な社会の構造的問題が明らかになりました。
その構造的問題の本質は、決して原発に限った話ではないと感じています。
公表直後、報告書の内容はメディアにも大々的に取り上げられましたが、その内容はきちんと国民の皆様には伝わっていないのではないかと危惧しています。
海外では、国会事故調の報告書は、非常に高く評価されています。
諸外国は、福島の事故から学ぼうとしています。また、日本が事故から何を学び、どう変わるのかを注意深く見守っています。
私は今、日本は大きな岐路に差し掛かっていると感じています。
我々は改めて、事故そして日本が抱える構造的問題点に、きちんと向き合う必要があるのではないでしょうか。
子供達の未来の為に、世界に誇れる社会を残したい。それが私の願いです。

田内 愛花
東日本大震災が起こった当時、受験勉強で手が離せなかった私は何かしなくてはと思いつつ、結局何もできずに一年以上の時間を被害から遠ざかって過ごしてしまいました。大学に進学し、様々なボランティア活動に関わってみて今回の震災についてやっと少しずつ当事者意識を持つことができるようになった気がしています。
活動の一環で交流した福島県いわき市の子供たちはとても元気でしたが、放射能汚染が懸念される地域に住んでいるため未だに外で自由には遊べないと言っていました。他にも避難するにあたって家族が離れ離れになってしまったり、それが原因ですれ違いが生まれてしまったり、避難先の学校先にはなじめなかったり…震災、そして原発事故の影響は、それをあまり受けなかった私たちが想像する以上に現地の方々にとっては大きいものです。
まだ知識が足りない学生の身分で、原発に賛成だとか反対だなどと説くことができるとは思いません。しかし実際にあの日、何が原因で何が起きて今どのようになっているのかを知り、これからどのように行動すれば良いのかをこれから社会人になるにあたって決めたいと強く感じています。
現地の方々に寄り添いながら、その先を見据えた復興支援をさせていただくためにも、今回のプロジェクトで勉強できたことを生かしていきたいと思いました。
この活動を通して今まで福島原発事故、現地や3.11について少しでも多くの方に知って頂けたら幸いです。

堀田 知行
【プロフィール】
こんにちは。堀田です。普段は、企業で起こった様々な出来事についてその実態を解明し、経営者が説明責任を果たすお手伝いをする仕事をしています。事故調には、微力ながら協力調査員として参加させていただきました。

メッセージ

ビジネス用語で、事業者に対する直接、間接の利害関係者(株主、取引相手、地域住民など)を「ステークホルダー」といいます。ステークホルダーは、その事業の経営者から適切な情報の開示を受け、その事業の自らの関わり方について、意思決定を行う権利があります。そして、企業経営者は、こうしたステークホルダーに対して、意思決定に資する情報を提供する義務、つまり説明責任を負います。
「原発」の場合、事故が起こった際に、直接・間接の被害を負う可能性がある人全てがステークホルダーであり、その範囲は他の事業に類を見ないほど広範囲に及びます。今回の福島原発事故が直接的、間接的にもたらした被害の規模と影響の広さは、電気事業者や監督官庁、発電所の立地自治体だけでなく、まさに日本国民全員が(場合によっては他国民も)原発のステークホルダーであることを改めて認識させられました。その一方で、当事者であるはずの国民は、原発との関わりにおいて自らの意思決定の余地があまりに少ないことに気付かされました。そして、国会事故調は、その意思決定に必要な情報すら、正しく開示されてはいないことを明らかしました。説明責任がないがしろにされた根底に、「どうせ国民は選ぶ余地がないのだから、知らない方が幸せですよ。」という発想があったかどうか分かりませんが、原発における現状の有り方は少なくとも民主主義とはいえません。事故のリスクを負うステークホルダーが、正しい情報と理解に基づいた議論を行い、原発の是非や運営について意思決定を下すことができる社会を実現する、一助になればという思いで参加しています。

松澤 香
【プロフィール】
10歳のとき、火曜サスペンス劇場「女弁護士・・・」を見て弁護士を目指す。01年 慶應義塾大学法学部法律学科卒業、02年10月 弁護士登録、森・濱田松本法律事務所に入所、08年 米国ハーバード大学ロースクール卒業、09年1月 ニューヨーク州弁護士登録。11年12月 国会事故調(東京電力福島原子力発電所事故調査委員会)事務局調査課長として出向後、森・濱田松本法律事務所に復職(現職)。

メッセージ

皆さんは、国会事故調を知っていますか?
国会事故調は、憲政史上初めて、独立の第三者委員会として国会に設置された、東京電力福島原子力発電所事故に対する調査委員会です。国民の代表者の集まりである国会から付託を受けておりますので、委員会は、国民の皆さんがクライアントであるという認識の下、全力で調査を行い7つの提言を行いました。是非、1人でも多くの皆さんに報告書を読んでいただきたいと思い、このプロジェクトに参加いたしました。

松原 真倫
【プロフィール】
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了。
同大学院博士課程在学中。専門は政治学。
日本学術振興会特別研究員(DC1)、文教大学非常勤講師を兼任。

メッセージ

我が国は一刻も早く福島第一原発事故の原因特定と責任追求に決着をつけ、50年後、100年後を見据えた環境・エネルギー政策の立案を進めるべきです。国会事故調報告書は、そのための非常に重要な指針であり、日本社会全体の財産です。このプロジェクトへの参加を通じて、国会事故調の成果を最大限活用しながら、いま一度社会全体で「ポスト3.11」の国家戦略を検討する機運を作り出したいと考えています。

木村 新
【プロフィール】
17年間サイパン島で生活をする。現在早稲田大学国際教養学部2年生。太平洋諸島学会学生会員。東大赤門起業家クラブ代表。趣味はウクレレ。

メッセージ

僕が育ったサイパン島が位置する太平洋諸島地域は、実は原子力や放射能と深い関わりがあります。 1957年にマーシャル諸島では10年の間に67回もの核実験(放射能調査)がアメリカによって行われ、被爆者そしてその家族は今もなお放射能汚染に苦しまされています。 また、第二次世界大戦時にはサイパンの隣の島、テニアンから広島や長崎に原子爆弾を積んだB-29が飛び立ち、日本を唯一の被爆国にしました。 歴史上まれにみる悲惨な出来事があったにも関わらず、僕は何もすることのないまま、「自分とは関係のないもの」として今を生きてきました。 そんな中起こった3・11の震災、そして原発事故。これらは自分が生きている「今」起きていることです。 福島原発で起こったことを、過去に太平洋諸島地域で起こった悲劇同様に、「自分とは関係ない」と決めつけたくない。 そう感じてこのプロジェクトに参加しました。

三島 健治
【プロフィール】
慶應義塾大学3年。2011.3.11の直後に大学へ入学し、その年に黒川清先生の授業を受講していたことで、国会事故調の設置・委員会について知る。2012年、カンファレンスの開催を通して、日本全国・世界の人たちと関わる機会を持つ。

メッセージ

この文章を読んでいるあなた、国会事故調って何か知っていますか?
2013年4月、新学期がはじまり「けんじは、今何してるの?」と友人に聞かれ、「国会事故調で調査されていた方とかと一緒に…」と説明をはじめると
「こ っ か い じ こ ち ょ う な に そ れ ?」
と言われました。あなたはどうですか?
2011年冬、黒川清さんの授業を受けているときに、国会事故調の委員長就任が決まりました。そういうこともあり、インターネット配信されていた委員会をみてみることに。そこに映ったのは、超優良企業と思われてきた東京電力のトップのあいまいな意見、元総理や大臣のたじたじする姿など。レポートがでて読んでみると、そこには「人災」と書かれていました。
ところで、僕が本プロジェクトに参加しているのは、国会事故調というワードを広めたいからではありません。国会事故調が示してくれた「日本の問題点」を、友達を含め僕と関わってくださっている人と共有したいからです。そして、共有できた世界中のみんなと話し合いたいからです。広めるべき価値がある・何かを生む可能性のあるものがそこにあるんです。

協力者

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